今回のブログは、教材開発までの過程をご紹介します。
子供たちは、3年生までに0.2や1.5などの1/10の位までの小数を学習してきました。4年生では、それを1/100や1/1000の位まで数を広げていくことになります。
単に「0.1の1/10が0.01です。」と教えても、よく分からぬままに過ぎてしまいます。子供たちが視覚的に、しかも体験的に1/100をつかんでいく方法はないかと考えました。
教科書では、ポットに入る水のかさを調べている場面が提示され、左のように、1.2Lと1.3Lの間であることを図で示しています。
そして、「ポットに入る水のかさを、L単位で表しましょう。」という課題にして、0.1Lより少ないかさに着目させているのです。少ない紙面で、課題意識を起こすよい課題です。その上で、0.2と0.3の間を10等分して、1.28Lを導き出しています。
しかし、なぜ1.28という数なのか、なぜ0.1Lの1/10の単位が必要になるのか、また、小数の場合も整数の場合と同様に、1+0.1×2+0.01×8というように表すことができるという考えにもっと焦点を当ててみたいと考えました。
いろいろと資料を探してみましたが、自分の思いと一致するものはなく、ついに授業を行う2日前になってしまいました。
そこで、教科書を生かし、水の量を素材にすることに決めました。水と言えば、ペットボトル。そうだ、これを使ってみよう、と急に思いつきました。
以前から疑問に思っていたことなのですが、パックの牛乳でもプリンでも容器にいっぱいに入っていることはありません。上に隙間があいています。中身があふれたり、容器が壊れたりするからなのでしょう。でも、一体どれくらいいの量がそこに入るのだろうかと思っていたのです。
1.5Lのペットボトルでためしてみました。メスシリンダーではかってみると、1.62L入るのです。しめた、これは使える!と思いました。
1Lをはかるにはリットルますを使います。0.1Lをはかるにはプリンカップを使います。給食でゼリーが出たときにカップを捨てずに確保しておいたのが役に立ちました。
ところが、0.01Lの容器がないのです。ペットボトルのふたは8mL、コーヒーミルクは8mL,ガムシロップは11mLです。教室、教材室、生活科室、理科室などにあるいろいろな容器を見付けてはメスシリンダーではかったのですが、見付かりません。ほとほと疲れて帰宅してしまいました。
その夜、夕食のサラダにマヨネーズをかけようとしたとき、はっと思ったのです。もしやこのふたは…すぐはかってみたら、何とぴったり10mL! 0.01Lなのです。なんだこんな身近なところに0.01Lがあったのかと、「灯台下暗し」を改めて感じました。それでも、見付かった喜びは大きいものでした。
授業当日になりました。
「ふつう、このペットボトルには、何Lの飲み物が入っているのですか?」
「1.5Lです。」
「1.5Lといっても、少し隙間がありますね。水をいっぱいまで入れたら、全部でどれくらい入るのでしょう?」
「1.6L」「1.7L]…「そんなにはいらないんじゃないかなあ。」
子供たちは、いつも目にしている1.5Lのペットボトルに水がどれくらい入るものなのか誰も知らないのです。私でさえ、授業2日前までは知りませんでした。それだけに、子供たちの興味関心を高め、問題意識を高めることができました。
「では、水を入れて実験してみますよ。」
1Lと0.1Lが6つ分とはしたができました。
「このはしたは、どうしますか?」
「もっと小さいカップはないのですか?」
と言い出すのにたいして時間がかかりませんでした。
そこで、例のマヨネーズのふたの登場です。
こうして、既習の単位では表しきれない場面に直面した子供たちは、新しい単位の必要性を感じることができました。
すると、0.1が6つ分で0.6、0.01が2つ分で0.02になります。
だから、全体では、1.62Lとなるわけです。
これなら、小数の場合も整数の場合と同様に、1+0.1×6+0.01×2というように表すことができるということから、整数と小数は同じ構造であることが分かると思います。
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