1 はじめに
100マス作文は、三谷祐児氏の実践です。100マス作文に関連した発表で、第20回東書教育賞優秀賞を受賞しました。私の提案は、この実践を基盤として私が実践してきたものを付け加えたものです。
100マス作文は、簡単に言うと、3分間という制限時間の中で作文を書き、1分間で五七五に内容を要約するというものです。目的は、書く力を伸ばすことです。
初めのうちは、ほとんどの児童が「書く事なんてない」と言います。 しかし、指導を重ねていくと、どんどん書けるようになっていきます。
「書く力」は、書き続けること、書き慣れることで育っていきます。それは、どんな教師でも分かっていることです。でも、なかなかできません。
そこで、私は、「いつ書くか」「何を書くか」「どう書くか」の3つがポイントだと考えました。
2 いつ書くか
初任の時から2年間、5,6年生の児童に日記を書かせました。大学ノートを半分に切り、一人2冊ずつ渡して、毎日交互に持って来させ、コメントを書くという方法でした。児童の心と近付いたことを痛感しました。書く力を伸ばすためにやったのではなく、生活指導のためにやっていたように思えます。高学年になると、結構な量の作文が書けるようになり、コメントには最低1時間かかりました。そのうち、学校ではコメントをする時間がなくなり、自宅に持ち帰るようになりました。だんだん疲れて深夜までかかるという日々が続きました。
転勤しても、書く力を高めることを意識した日記指導を随分とやりました。児童が家庭で書き、教師がコメントを書くというパターンでした。学校で書くには時間が足らないという意識だったのです。そのうち、どんどん仕事が増えてきて、私は日記指導ができなくなりました。
そんなとき出会ったのが「小学校『100マス作文』入門」という本です。そこには、書く力を高めるためのノウハウが満載されていました。書く力を高めるには日記ばかりではないことや短時間(10分)でも高められることを知りました。
時間がないと嘆くより、時間は生み出すものです。朝の時間に書く。掃除の時間に書く。国語の時間に書く。いろいろ工夫して、1週間に1回、10分間の100マス作文の時間を生み出します。作文準備・作文・回収を10分で行います。
3 何を書くか
児童は、何か行事がないと作文は書けないと思っています。学校で行事があった時にその取り組みや思い出を記録として残すために、「行事作文」を書かせることが多いのもその一因です。普段の日記でも「ゲームをした。」「友達と遊んだ。」などの羅列が多いです。夏休みの日記についても、どこにも行かなければ何も書けないことが多いです。
児童のそんな思い込みを取り払うには、どうしたらよいでしょうか。そのためには、身の回りに書く材料がたくさんあることに気付くようにすることです。どこか遠くに行かなくても行事がなくても、見たこと、聞いたこと、感じたこと、ふと思ったことなど五感を働かせれば、書く材料は山ほどあります。
100マス作文では、題材をすぐに選んで書けるようにすることがねらいです。 そのためには、次の3点を指導するとよいと考えます。
(1) 作文の前に「トピックス」を入れる。
「トピックス」は、題材選びのヒントになるような話のことです。校長先生のお話が1つ、担任の話が1つ以上入れれば「トピックス」となります。校長先生と担任が情感を込めて語るトピックスは、児童の心情を育て、題材選びに直結すると考えます。
(2) 書き出しを意識させる。
児童は書き出しの言葉が書けると、案外すらすら書けるものです。100マス作文の原稿用紙を配布するときから、「書き出しを考えなさい。」と言い続けます。児童は初めに集中すると、後の学習が比較的スムーズです。
(3) 「自分らしく書く」なら、何を書いてもいいよ。
校長先生や担任がのトピックスでもよいし、自分で見付けた題材でもよいと伝えます。その内容は、自分らしさが出ていればよいと思います。自分が思ったこと、考えたことこそかけがえのないものだからです。ただし、人権に配慮して、「だれかがつらい思いをするようなことは書いてはいけません。」と指導します。
4 どう書くか -100マス作文の7つのルールー
児童に次のような100マス作文のルールを提示(PowerPoint)で提示します。
①「自分らしく書く」なら、何を書いてもいいよ。
②字がきたなくてもいいよ。
③漢字で書かなくてもいいよ。ひらがなばかりでもいいよ。
④題はなくてもいいよ。
⑤3分間で100字程度の作文にチャレンジしよう。
⑥その後、書いた内容を1分間で「五七五」にまとめよう。
⑦時間がきたら途中でもやめます。途中で終わってもいいよ。
①「自分らしく書く」なら、何を書いてもいいよ。
「自分らしく書く」とは、自分だからこそ分かる思い、自分だからこそ分かる感じ方を書くことです。「3何を書くか」の(3)を参照してください。
②字がきたなくてもいいよ。
時間制限がありますから、少しぐらい字がきたなくてもよいのです。読めればOKです。でも、慣れてくるにつれて、児童はきれいな字で書けるようになります。
③漢字で書かなくてもいいよ。ひらがなばかりでもいいよ。
作文では、内容が優先されます。漢字を思い出すことに時間を使ってしまったのでは、時間が足らなくなってしまいます。でも、児童はだんだん漢字を入れて書けるようになります。
④題はなくてもいいよ。
書くことが見つからない児童は、題を付けるのも大変です。100マス作文には、題はありません。内容を五七五でまとめるので、これが題の代わりになります。
⑤3分間で100字程度の作文にチャレンジしよう。
長文になると、評価をするのが大変です。高学年では、3分間くらいで100字がちょうどよい量です。長すぎても短すぎてもだめです。ただし、原稿用紙のマスは100マスではなく、実際は160マスにしてあります。これは、ひらがなばかりになってしまった場合や100字を過ぎてしまった場合や段落を構成する場合に備えてのことです。
⑥その後、書いた内容を1分間で「五七五」にまとめよう。
俳句にも通ずる活動です。重要なことを五七五に分けて考えることで、要約力を付ける活動として位置付けることができます。リズムよくまとめるという学習は、児童に集中力も付けます。
⑦時間がきたら途中でもやめます。途中で終わってもいいよ。
五七五でまとめなければならないので、100マス作文途中でも必ず3分間でやめます。初めのうち児童は、完成したいばかりに五七五の時間を使ってよいかと言いますが、却下します。「一生懸命やっていたね。今日はできなかったけど、きっとできるようになるよ。」と声掛けをしましょう。そのうち、教師も信じられないくらいできるようになります。
※なるべく早くコメントを書きます。100マス作文と五七五の間の隙間でよいと思います。コメントは大きい字で、たくさん書いたように、見せかけます。教師の働き方改革です。
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