「さいたさいた チューリップの花が ならんだならんだ 赤白黄色」
これは、童謡「チューリップ」の歌詞の一節です。なぜ黄だけに色が付くのでしょうか。そう言えば、信号の色も赤青黄色です。
まず、いろいろな色の名前に「い」を付けてみましょう。「い」を付けるとは、形容詞になるかということです。
赤い、青い、白い、黒いと言います。ところが、紫い、橙い、黄い、黄緑い、緑い、茶いとは、言いません。
次に、「さ」を付けてみましょう。「さ」を付けるとは、名詞になるかということです。
赤さ、青さ、白さ、黒さと言います。ところが、紫さ、橙さ、黄さ、黄緑さ、緑さ、茶さとは、言いません。
今度は、「み」を付けるとどうでしょう。「み」を付けても、名詞になるかどうか調べることができます。
赤み、青み、白み、黒みとは言います。ところが、紫み、橙み、黄み、黄緑み、緑み、茶みとは、言わないのです。
このように、色を表す言葉を調べてみると、赤、青、白、黒の4色が同じ形で変化していることが分かります。
では、別の角度から考えてみましょう。繰り返すことができるかという観点で調べてみましょう。赤々、青々、白々(しらじら)、黒々と言います。ところが、紫々、橙々、黄々、黄緑々、緑々、茶々とは、言いません。
次は、対にすることができるかという観点で調べてみましょう。「運動会は赤白で競う。」「赤鬼青鬼」「赤鉛筆と青鉛筆」「白黒をつける。」などと言います。囲碁の碁石は白黒です。「カラー」に対して、「白黒」と言います。それに対して、他の色は、対にして表さないのです。
このように、色を表す言葉を調べてみると、赤、青、白、黒の4色が特別の意味をもった色であることが分かります。
それでは、なぜこの4色が特別なのでしょうか。それは、中国の神話に関係すると言われています。中国では、天の方角の神として、東の青竜(せいりゅう)、西の白虎(びゃっこ)、南の朱雀(すざく)、北の玄武(げんぶ)がいました。朱雀の「朱」は赤を指します。鳥居の色にも取り入れられています。玄武の「玄」は黒を指します。人を付けると、玄人(くろうと)になります。4色が方角を表していたので、昔から特別扱いをされてきたと言えるでしょう。
4色は、相撲にも関係しています。土俵の屋根の四隅を見ると、青、白、赤、黒の房(ふさ)が垂れています。これらは、4神を表すそうです。
このように、赤、青、白、黒の4色は、破格の扱いを受けてきました。だからこそ、「色」を付けないことが多いのだそうです。
チューリップの黄色も、信号の黄色も、実は、これらの
4色以外の色であったために「色」を付けていたわけです。
今度、色を表す言葉を目にしたら、スルーしないでみてみようと思います。少し変わった<景色>が見えてくるのではないかと思うのです。
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