1 はじめに
物事を指し示す言葉である指示語。3年生では、「これ・それ・あれ・どれ」などの「こそあど言葉」とも言っています。
指示語が何を指しているのかを問う問題は、中学校受験問題にも取り上げられています。
どのように指導したらよいのでしょうか。
2 課題
3年生が次の文を読んで、指示語の内容をどれくらい捉えることができるでしょうか。
モンシロチョウは、たまごからよう虫になり、やがてさなぎになり、それから、せい虫になります。カブトムシもアゲハチョウも同じです。これらは、「完全(かんぜん)へんたい」をするこん虫と言います。
問題① -線の部分の「これら」とは何ですか。次の中からすべてえらび、記号で答えましょう。
ア モンシロチョウ
イ たまごからよう虫
ウ さなぎ
エ せい虫
オ カブトムシ
カ アゲハチョウ
正答【アオカ】
この問題の正答率は、22%です。誤答は、イを選択したのが13%、オ・カ、エがそれぞれ9%、あとはバラバラというように多岐に渡りました。
また、「これ(ら)」となっていて、全て選ぶことになっていながら、複数解答をしたのが正解を含めて52%です。
この結果から、2つの課題が浮かび上がってきました。
1つは、指示語が指す言葉を捉える指導法の確立です。よくある指導は、「指示語の前にある言葉から探しなさい。」という方法だけでした。しかし、それでは、上のような問題をなかなか解くことができないのです。
もう1つは、「これら」の(ら)の意味指導です。
(ら)が複数のことを示していることを改めて教える必要があります。
では、次のような問題ではどうでしょうか。特別な指導をせずに、3年生がどれくらいできるでしょうか。
カイコガは、えい語でシルクワームといいます。シルクは「きぬ」、ワームは「虫」という意味(いみ)です。 カイコガはさなぎになるとき、体のまわりにまゆを作ります。まゆからはきぬ糸をとることができるため、このような名前がついています。
(大日本図書3年理科の教科書から引用)
問題② -線の部分の「このような」とは何ですか。次の中からすべてえらび、記号で答えましょう。
ア カイコガ
イ シルクワーム
ウ きぬ
エ 虫
オ さなぎ
カ まゆ
キ きぬ糸
正答【イ】
この問題の正答率は、30%でした。誤答は、アを選択したのが26%、ウ・エが
13%、あとはバラバラというように多岐に渡りました。
3 解決策
このような実態から次のような解決策を考えました。
1つは、指示語が何を指しているかを捉えるためには、「前の言葉よりも後の言葉に気を付ける」ことです。
問題①では、「これらは、『完全へんたい』をするこん虫と言います。」とありますから、これらは昆虫なのです。ですから、カブトムシ、アゲハチョウを指すことが分かります。また、「同じ」という言葉から、モンシロチョウを捉えることができます。
問題②でも、「第1に指示語の後の言葉に、第2に前の言葉に気を付けよう。」という指導をすれば、「このような名前」であることを捉えることができます。
その上で、「シルクワーム」を指していることが分かります。
一方、「これら」の(ら)の意味指導としては、「ぼくら」や「われら」などを例として示すとよいと思います。(ら)が複数のことを示していることを当たり前として扱うのではなく、きちんと指導することが大切であると思います。
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