教員の働き方改善・改革案27
奥底のねらい
テストの直前に,そのテストによく似たプリントを宿題に出しました。児童は裏の答えを見て,自分でマルを付け間違えたら直して提出します。
頑張った児童は,当然ながらよい点を取ります。褒められて自信がつき、次もがんばろうと思います。その繰り返し。
点を取らせるためだけがねらいではなく,学習の仕方の学びや学習への意欲の向上がねらいです。
今回の特集は、「体力テストの改善・改革」です。教員の働き方改革5の続編です。
1 東京都,体力テスト目標を達成できず
全国の小中学校で、6月に体力テストが行われています。全国調査は小学5年生と中学2年生を対象にして行われています。私は,実態を明らかにするために必要だと思います。
それに対して,東京都は,小中高の全学年で独自の体力テストをやっています。運動能力の底上げを目指し,「小学生は全国上位,中学生は全国平均とする」という目標を立てて 頑張っていました。
しかし,令和4年6月に行われた調査では次のようになってしまいました。目標を達成することができませんでした。(8種目のため,点数は80点満点)
| 点数 | 全国平均 | 都道府県別順位 | 昨年度順位 |
小5男子 | 52.59点 | 52.28点 | 19位 | 16位 |
小5女子 | 54.40点 | 54.31点 | 25位 | 26位 |
中2男子 | 40.08点 | 41.04点 | 41位 | 43位 |
中2女子 | 46.62点 | 47.42点 | 40位 | 42位 |
2 東京都教育委員会の分析
東京都教育委員会の分析では,「過去10年間の傾向では,小5は全国平均を上回ることが多いが,中2は平均に達していないという結果が出ている。成長するにつれ,運動が好きな子と嫌いな子に二分される。」としています。
3 独自の体力テストでは,児童生徒の運動能力の底上げを図ることができない
東京都独自の体力テストのデメリットについては,「教員の働き方改善・改革5」で,私は,次のような点を挙げています。
(1) 時間がかかりすぎて,本来の体育の授業ができない。
(2) 体力テストと関係の薄い質問調査がある。
(3) 体格調査は必要でない。
(4) 正確とはいえない。
(5) 高学年が世話をしている。
(6) 運動量がほとんどない。
(7) 事故が心配である。
(8) 授業改善にはあまり活用されていない。
これだけのデメリットがありながらも教員は東京都独自の体力テストをやり遂げて頑張ってきました。
東京都教育委員会も教員から出されたおびただしいデータを収集し集計し冊子にまとめて発行してきました。もの凄い努力だと思います。
しかし,前述のような全国体力テストの結果です。「独自の体力テストをやることでは運動能力の底上げを図ることはできない。」ということが検証されたと言えるでしょう。そして,今こそ働き方改革の目でその仕事を見直してほしいのです。
4 東京都教育委員会の方針に対して
令和5年1月9日付けの読売新聞朝刊の記事には,このような結果から東京都教育委員会が「数値目標を撤廃する一方で,運動自体に関心を抱けるような施策を展開していく方針で,『一人一人に運動への関わりを見つけてもらうことで,体力の向上につなげていきたい』としている。」とありました。
正にその通りだと思います。過去10年間を振り返り,そのような選択をした東京都教育委員会はさすがだと思います。
さらに一歩踏み込んで,東京都教育委員会には,独自テストを廃止あるいは縮小して教員を助けるとともに,児童生徒が運動自体を楽しめる施策の実現を心待ちにしております。
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