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執筆者の写真kazu

就学時健康診断は、学校行事ではない

更新日:2022年8月22日

教員の働き方改善・改革案25

的を絞る

 会議の時間が長くてイライラすることはありませんか?

 共通理解という名の下に、伝え合いに終始し、自分が知ってもあまり関係ないと感じるときにそれが起きます。

 しかし、教育上大切と言われては、参加をしないわけにはいきません。

 会議の主催者は、もっと的を絞りませんか? 短い時間で、最大の効果を挙げるために。 

 

 今回の特集は、「就学時健康診断は、学校行事ではない。」です。


1 就学時健康診断とは


 学校保健安全法第11条には、次のように記されています。

 

第 11 条 (就学時の健康診断) 市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会は、学校教育法第十七条 第一項の規定により翌学年の初めから同項に規定する学校に就学させるべき者 で、当該市町村の区域内に住所を有するものの就学に当たつて、その健康診断を行わなければならない。

 

 これにより、小学校が11月に行っている就学時健康診断は、学校本来の仕事ではありません。

 一方、小学生が4~6月に受ける定期健康診断は学校行事です。【特別活動編】小学校学習指導要領解説(平成29年)P.123に学校行事として取り上げられています。

 しかし、就学時健康診断については、小学校入学前のことなのですから学習指導要領にも載っていません。つまり、就学時健康診断は、「学校行事」ではありません。「学校で行う行事」ということになります。このような行事は、他には、PTA主催のお祭りとかクリーンキャンペーンとかがあります。


2 就学時健康診断の流れ


 就学時健康診断の流れは、次の通りです。ここでは、事前事後の業務も含みます。

 

(1)教育委員会が、計画を作成する。(日程調整・予算・学校医などへの説明会・入学予定者名簿(学齢簿))を作成する。<4~10月>


(2)学校が、就学時健康診断の実施計画を作成する。


(3)教育委員会が、保護者に通知する。(日程・場所・持ち物等)<10月>


(4)学校で就学時健康診断を行う。<11月>


(5)教育委員会が、保護者へ治療の必要な内容について勧告する。学校生活に支障となるような疾病等の疑いがあれば、教育相談・就学支援につなげる。


(6)教育委員会が、就学時の健康診断票を入学する校長に送付する。<3月16日まで>

 

3 学校が実施計画を立てて、就学時健康診断を学校で行う理由


 本来教育委員会が全てやらなければならない業務の一部をなぜ学校がやるかというと、次のような理由が挙げられます。


(1) 他に会場がない。

 教育委員会は学校を管理しているから学校がよいのです。公民館でも可能ですが、数が足りません。会場が学校なので、当日の具体的な実施計画を学校に立ててもらいたいのです。


(2) 業務が多すぎて人手が足りない。

 教育委員会の事務能力をはるかに超える業務になってしまいます。教職員に協力してもらいたいのです。


(3) 入学予定者である。

 就学時健康診断を受けた会場が入学予定になる学校であるということは、保護者や子供にもメリットがあります。会場が地元で近いです。


 このようなわけで、教育委員会は、就学時健康診断(当日)を校長に委託しているのです。


4 委託された業務を行う上での問題点

 

(1) 児童が係をしている場合がある。


 5年生や6年生が就学時健康診断の当日に係として活動している学校があります。5年生の場合は、入学予定者が1年生になったときに6年生として迎えられるためです。6年生の場合は、最高学年としての自覚のためです。

 しかし、学習指導要領にも決められていない活動ですし、プライバシーにも配慮しなくてはいけない活動です。この活動は、児童にとってかなり難しいものではないでしょうか。

 それに、児童を分担して仕事を説明し、配慮をさせるのにもかなりの時間がかかります。


(2) 休憩時間をとらない。


 教員は、就学時健康診断が特別なものとしてかなり意識しています。しかし、教育委員会が校長に委託した業務であることから、通常の勤務時間でよいのです。

 したがって、45分間の休憩時間をしっかりとらなくてはいけません。就学時健康診断が終わったときに、共通理解とか反省とかという名の下に、休憩時間が無視されることが多いです。教員は、保護者対応などでも神経をすり減らしてかなり疲れています。休憩時間をとらずに職員室に集まって情報交換をするなんてことは間違いです。


(3) 欠席者の扱い


 当日、入学予定者が欠席する場合は、保護者が会場と教育委員会学校保健課に連絡することになっています。教員がもし欠席の電話を受けたら、切らずに管理職につなぐことが大切です。就学時健康診断全般は、教育委員会が実施する義務を負います。あとのことは、任せましょう。最終的に就学時健診を受けることができなくても入学は可能なのですが、学校がそれをあえて伝えることはしません。


5 教員の働き方改革の上での対策


 新型コロナウイルス感染症拡大のため、児童が就学時健康診断で係をやらなくなっているのではないでしょうか。この機会に、これからもずっとそうしてほしいです。


 また、実施計画に教員の休憩時間をしっかりと明記し、教員が確実に休めるようにしてほしいと思います。共通理解や反省などは、休憩時間を除いた勤務時間の中でやるべきです。

 

 教育委員会は、学校が密にならないように、保護者ごとに登校時刻を指示するなど、細かい配慮をしてくださっています。そのような支援に感謝しながらも、教員が疲弊しないように対策をすることが大切だと思います。

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