教員の働き方改善・改革案17
今こそ行動を起こすとき
「お客様は神様です。」という言葉があります。
教員にとっては、お客様は差し詰め「児童」なのかもしれません。
しかし、教員がいなければ神様も困るでしょう。教員が健康で、心豊かな生活を送ることができてこそ児童も生きるのです。
今こそ行動を起こすときです。業務を減らすために。
今回の特集は、「要録の所見には通知表のものをそのまま活用しましょう」です。
昔は、通知表も指導要録も手書きでしたから大変でした。3月は、通知表と要録、6年生の担任はさらに中学校へ送る要録の抄本を手書きで作らねばならず、ハードでした。抄本というのは、指導要録をA4くらいの用紙1枚になるように抜粋したものです。指導要録は6年間の記録ですが、抄本は6年生の時だけの記録です。
今は、校務支援システムが発達し、通知表も要録も抄本もPCで作成できるようになりました。このシステムでは、通知表の内容を、要録や抄本にリンクして表示することができるのです。教育委員会も教員の働き方を改革するためにいろいろ努力していることをひしひしと感じます。
それでも、「あれっ、変だな。」「無駄なデータ処理をしているなあ。」と感じられることがあります。
それは、要録の所見の作り方です。
1 通知表の所見を生かして要録の所見を作成をするときの問題点
要録の所見には、特別の教科道徳「学習状況及び道徳性に係る成長の様子」、「外国語活動の記録」(3,4年のみ)、「総合的な学習の時間の記録」、「総合所見及び指導上参考となる事項」があります。要録の所見を考えて通知表の所見を作成すれば、そのまま流し込んでもよいはずです。
ところが、「要録は『~である』で終わる常体文で書かなければならないから、通知表の文をそのまま使うことができない。」と思い込んでいるのです。だから、教員は敬体文で書かれた通知表の所見を、常体文に直しているのです。年度末の大変忙しい時期に、教員はこんな時間のかかる作業をしているのです。せっかくの教育委員会の配慮がもったいないです。
2 「要録は常体文でなければいけない。」という思い込み
「要録は常体文でなければいけない。」という法律は、どこにもありません。国も地方自治体も、書類作成を効率的に実施するように求めているのです。
「要録は常体文でなければいけない。」というのは、単なる思い込みなのです。
通知表は担任が児童の成長を願い、心を込めて作成したものです。たくさんの時間をかけています。それを活用するのが正しいはずです。大切にすることは、文体より内容でしょう。
「通知表は保護者向けのものだが、要録は学校のためのものだから書くことが異なる。」という方がいます。しかし、要録は、指導の過程及び結果を記録し、その後の指導や外部に対する証明のために作るものです。通知表も要録も児童のためにあるのです。同じ内容でも差し支えないはずです。わざわざ表現を変える必要はありません。内容を変えることで誤解を生じることもあるかもしれません。
3 指導要録の開示
教員は、開示しない前提で要録を作成しています。しかし、開示請求のために、結局のところ開示したケースが実際にあります。以下は、請求が認められたときの理由です。
(1)本請求は憲法第13条の「プライバシーの権利」第26条の「教育を受ける権利」に基づくものである
(2)国際人権法上も教育評価情報の本人開示は世界の大勢となっている
(3)諸外国においても教育評価等の生徒記録の自己情報開示請求権は保障されている
(4)指導要録には指導資料及び外部に対する証明の原簿という2つの性格を有するだけでなく、マスコミ等への資料提供にも利用されている
◆199302KHK127A1L0445J
TITLE: 指導要録の開示を考える - 箕面・豊中・川崎3市の個人情報保護審査会答申の検討を通じて -
AUTHOR: 山口 明子
SOURCE: 大阪高法研ニュース 第127号(1993年2月)より引用。
今後、要録を開示する前提で作らなければならないことに備えて、通知表のままの表現を活用したらどうかと思うのです。
4 通知表のデータを活用するときの注意点
そのまま転記するにしても注意することがあります。例えば、通知表に「進級おめでとうございます。」という表現を記述してしまったら、要録には載せることができません。明らかに要録には不適切な表現です。
このような場合には、全てをまず転記してから、その部分を削除する必要があります。初めから要録を意識して記述していけば、削除する作業もなくなります。
ただ、通知表には載せないけれど、その後の指導上必要なことを付け足すことはあります。例えば、特別支援教育を受けている場合などがそれに当たるでしょう。
とは言え、敬体文を常体文に直すという意味のない作業だけはしないようにしてほしいと思います。
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