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  • 執筆者の写真kazu

学校からプールが消える?

更新日:2022年7月13日

教員の働き方改善・改革案10

児童のために


 「児童のために」という言葉は、教員にとって究極の使命です。

 このことをなくして教育の発展はないと思います。

 しかし、時間は限られています。あなたが倒れたら困る人がたくさんいます。

 児童のために、自分や家族のために、そして、仲間を助けるために働き方改革を考えましょう。

 

 今回の特集は、「学校からプールが消える?」です。 これは、7月12日朝のNHKニュースの表題の1つでした。

 葛飾区立白鳥小学校では、今年から学校のプールを使わず、バスに乗ってスポーツクラブのプールで水泳学習をしているそうです。例えば、70人の4年生に対し、担任2人とインストラクター7人がレベル別に指導をしているそうです。

 東京都内では2割以上の自治体がすでに実施しているそうです。

 なぜ学校のプールを使わないのでしょうか。

 

なぜ学校のプールを使わないか。


(1) 最近の気象条件が悪化している。


 「昔は暑いからプールに入ろう。」ということが当たり前でした。ところが、最近は暑すぎるのです。気温も水温も上昇し、熱中症の恐れから授業ができない日が増えています。プールサイドではやけどをする児童もいます。

 こうした中で、民営のプールは室内なので、そのような心配がないのです。


(2) 教員の働き方改革が見直しの機運を後押ししている。


 学校のプールを安全に運営するためには、様々な業務があります。

①朝の管理

 朝、8時前には、気温と水温を測ります。また、残留塩素を測り、基準値に達していなければ、薬剤を加えます。測った数値を職員室の黒板に記入します。

 プールサイドやプールの底に木の葉や異物がないかを調べ、あったら取り除きます。

 水面にゴミや虫が浮いていたらバケツや網を使って取り除きます。

 濾過器を点検し、薬品を入れます。

②定期的な濾過器の点検

 学校の濾過器の性能によって異なりますが、たいがいは1週間に1度教員の当番が濾過器の洗浄に伴う作業をします。

③水の管理

 低学年では、水の深さを浅くしますので、水を減らします。

 高学年になると、水を加えます。

 これらの作業をミスすると、水の使用量が莫大なものになり、多額の税金を無駄遣いすることになります。場合によっては、担当の教員も罰金を払います。過去では、次のような事例があります。「弁護士ドットコムニュース2016.3.7」より引用しました。

 

 千葉市中央区の市立小学校で昨夏、男性教諭がプールの給水口の栓を閉め忘れて、大量の水を流失させる事故が起きた。この際に発生した水道料金約438万円をめぐって、誰が責任をとるべきかが問題になったが、今年2月中旬、小学校の校長と教頭、男性教諭の3人が全額弁済した。

 

 排水栓を閉め忘れた場合は、プール1杯分で済みますが、事例のように、給水栓の閉め忘れは、気が付くまでずっとあふれたままになってしまいます。


④水泳に関する用具の管理

 ビート板やコースロープ、デッキブラシ、ゴミ箱、網、バケツ、出入り口付近の板などの用具を管理します。


 これらの作業は、プールがある限り、当たり前のこととしてありました。しかし、新型コロナウイルス感染症だけでなく、異常気象による降水量の増加や熱中症対策ために、これほど水泳授業が中止になると、大変むなしくなります。授業が中止でも教員の作業は続くのです。


 ところで、葛飾区の例をとると、「担任2人とインストラクター7人でレベル別に指導している。」とありました。私は、これが素晴らしいと考えます。水泳は、特に、習熟度別に指導するのが好ましいスポーツです。個に応じて指導することで、児童の能力を引き出すことができます。児童は、適切な指導を受けるチャンスがあれば水泳が上達し、水泳が好きになるのです。

 学校の水泳指導では、指導する教員が少ないのでこれがなかなかできませんから、スポーツクラブでの指導の方が、児童のためになっていると思います。


(3) 施設の老朽化

 

 一番大きな問題が施設の老朽化だそうです。学校のプールは、建設されてから50年ほどたっているところが多く、改修が必要な時期にさしかかっているのです。

 葛飾区の試算では、80年使用するとして、1校当たり、建設費2億2132万円、改修費2億731万円、運営経費1億8720万円(1年234万円として80年分)がかかります。1年に平均すると約770万円です。

 それに対して、民間等のプールを活用した場合は、利用料347万円、送迎バス代(1校421人と想定して)160万円なので、1年では約507万円です。

 したがって、葛飾区は、プールを造るよりも民間等のプールを活用する方がリズーナブルな価格でできると考えています。さらに、気象条件が悪化している中、児童のために、確実に授業ができるようにお金を投資していく方がよいとしています。葛飾区は、将来、学校のプールの廃止を決めたそうです。


学校のプールは、消えてなくなるのか。


 水泳授業に対して、他の自治体では、プールを複数の学校で共同利用したり、公営プールを利用したりする対策も取られています。もしかしたら、将来、ほとんどの学校で、プールが消えてしまうかもしれません。

 

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