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  • 執筆者の写真kazu

体力テストの改善・改革

更新日:2022年8月11日

教員の働き方改善・改革案5

みんなで考え、みんなで実行する

 教員の働き方改善・改革は、一人で実行しても微々たるものです。しかし、みんなで考え、みんなで実行しようと決意することで実現します。

 国、地方自治体、教育委員会、業者、校長、教員がそれぞれ取り組んではいるものの、一丸となって進まなければいけないと思います。そうでなければ、教員は疲弊するばかりです。そして、教員を志望する学生が減っていきます。

 

 今回の特集は、「体力テストの改善・改革」です。

 全国の小中学校で、6月に体力テストが行われています。全国調査は小学5年生と中学2年生を対象にして行われています。また、東京都では、6月に全児童を対象に行われています。したがって、改善・改革をするには、行政単位で動くことが必要で、現場からの声を大きくしなければいけません。

 体力テストは、全国規模で行われているので、実態が明らかになり、行政がどう対応したらよいかの根拠となります。また、教員にとっては、授業改善の根拠となります。さらに、児童にとっては、自分の体力を把握して、全体と比較して改善を図ることができます。東京都では、生活面のアンケートも追加されています。3か月後くらいに一人一人に対して、体力や生活面についての励ましや助言が書かれたカードが返ってくるという仕組みになっています。

 一見、よいことばかりに見えますが、実はたくさんの問題点を抱えています。


1 体力テストの問題点


(1) 時間がかかりすぎる。本来の体育の授業ができない。


 体力テストは、握力・上体起こし・長座体前屈・反復横とび・20mシャトルラン・50m走・立ち幅とび・ソフトボール投げの8種目です。一般の方が考えても分かるかと思いますが、1クラスの児童がそれぞれを受検し、記録するには時間がかかります。

 教員が用意する道具は、握力計、マット、長座体前屈用の測定器、反復横とび用の1mの幅ライン、20mシャトルラン用のCD、20mの走路、ストップウォッチ、スタート旗、ゴールポスト、メジャー、ソフトボールです。そして、一番時間がかかるのが、ソフトボールのライン引きです。もちろん、教員が協力して作りますが、雨の日対策も考えなければならないので、大変な手間です。

 時間がかかり過ぎて、体育の本来の授業が進みません。


(2) 体力テストと関係の薄い質問調査がある。


 例えば、東京都の体力テストでは、生活習慣や食習慣、運動習慣を問う調査も付いています。国の体力テストに合わせたり、評価用の資料としたりする意味で調査が付いていると思われます。体力テストなのに、体力と関係の薄い質問も入っています。例えば、「朝食は食べますか。」「寝る時間は決まっていますか。」などです。「1日にどれくらいテレビを見ますか。」という質問にはげんなりしてしまいます。

 難しい質問もあります。「平日(月曜日から金曜日)では、平均して1日に どのくらいの時間、運動やスポーツをしていますか(学校の体育の授業を除く。)。」これを読んでいらっしゃる方、ご自分のことをすぐに答えられますか?

 高学年を見ると、自分で答えているようですが、低学年の児童にはとても難しくてできません。担任は保護者にお願いしていることが多いです。手紙で説明をして、回収する手間が大変です。これって、本当に必要なのでしょうか。誰も問題だと思っていらっしゃらないのでしょうか。

 

(3) 体格調査は必要か。


 身長、体重を記入する欄があります。もちろん、体力が体格と関係がないとはいえません。しかし、それに関した体力テストはないのです。東京都のデータが必要ならば、なにも一人一人のデータを入れて提出するのではなく、学校でまとめて提出すればよいことです。

担任が、一人一人の児童のデータを入れるのは問題だと言えます。


(4) 正確でない。


 データは、正確だからこそ信頼がおけます。しかし、実態はどうでしょうか。文部科学省から実施要項が出ていますが、教員がよく読んで理解しておかないと不正確になります。例えば、握力計の持ち方は、「人差し指 の第2関節が,ほぼ直角になるように握りの幅を調節する。」なのですが、一人一人の児童にきちんとこの通りにやっているでしょうか。

 とても簡単そうな50m走でも、「記録は1/10秒単位とし,1/10秒未満は切り上げる。」「ゴールライン前方5mのラインまで走らせるようにする。」という注意は忘れがちです。

 また、低学年では、正確に数えることがなかなかできません。反復横とびなどは、よく間違えます。


(5) 高学年が低学年の世話をする時間でない。


 さすがにコロナ禍のためにあまりやってはいないでしょうが、低学年の体力テストを助けるために、高学年が世話をするという活動をしていることがあります。信頼のおけるデータを得るためです。

 高学年の担任も児童も仕方がないかという気持ちで参加しています。頼りにされて感謝されれば嬉しいのですが、高学年の児童にとって、果たしてこれはどんな活動なのでしょう。


(6) 運動量がほとんどない。


 例えばソフトボールは、一人2回投げます。人数が多い場合は、おそらく練習もしないでしょう。1時間でボールを2回だけ投げておしまい。せっかく体育着に着替えたのに、児童に失礼だと思いませんか? 1時間あれば、投げる能力を高めるための学習がたくさんできるのに。


(7) 事故が心配。


 特に20mシャトルランを実施するに当たっては、6月は特に暑くなり、熱中症が心配です。冷房の効いた体育館でやるとか、気温が25度以下ならやってよいとかの配慮が必要でしょう。また、文部科学省から出ている実施要項には、回数の限りが男子80回以上、女子64回以上となっています。これでは、頑張りすぎる児童が出てしまいます。小学校では男子80回、女子64回で最高得点になるのですから、ここで打ち切るべきでしょう。事故が起きないうちに対策をとっておくことが大切だと思います。


(8) 授業改善にはあまり活用されていない。


 関心がある教員は、体力テストの結果を踏まえて授業の改善を図ります。しかし、たいがいの教員は、結果を出すことで精一杯です。なぜなら、準備や実施に大きな労力がいるからです。教育委員会(実際は下請けの会社)へデータを記録した用紙を提出するにも相当な時間をかけてチェックしなければいけません。その用紙を全員分スキャンして保存しておくことまでしています。その上、評価が戻ってくるのが遅すぎます。1年の半分が過ぎた頃に評価が分かっても効果が薄いです。授業改善にはあまり活用されていないというより、ほとんど活用されていないのではないでしょうか。


2 体力テストの改善・改革案

 

 そこで、私は、教員の働き方改革の観点で次の4点について提案したいと思います。


1 体力テストの実施は、4年以上にする。


 問題点で明らかにしたように、1,2年では体力テストの実施は無理です。国は5年生だけです。東京都は、4年以上にすべきです。これだけで何時間もの働き方改革が実現します。

「東京都児童・生徒体力・運動能力、生活・運動習慣等調査結果」も拝見しましたが、4年以上で十分です。

 1~3年は、運動量を確保し、テストより授業の充実を図りたいです。春の運動会などで必ずタイムを計るのだから50m走くらいはやったらという意見もあります。しかし、6月という規定のため、また計らなくてはならないのです。児童は体力テストのためにだけまた走るのです。4~6年だけで十分です!


2 質問調査は、なしにする。


 過去の結果とのしがらみでなかなかやめられないのは分かります。しかし、それよりも今大切なのは、教員の働き方改革ではないでしょうか。今なら変えても理解してもらえます。保護者にお願いするような内容や高学年の児童が1時間もかかって答える内容では、本末転倒です。体力テストの結果なのだから、質問調査はいりません。 


3 体格調査は、なしにする。


 体力にはもちろん体格が関係ありますが、この体力テストには関係がありません。わざわざ記述する必要はありません。あればよいものは省き、必ずいるものを残すのが鉄則です。

国の調査だけで十分です。


4 体力テスト活用ソフトを使う。  


 私はまだ使ったことがありませんが、体力テスト活用ソフトもあると思います。一人一人が持っているタブレットを生かし、自分で入力して即座に自分の体力を知り、対応を自分で図ろうとする児童を育むことが求められていると思います。


 私もこれまでは、自分でソフトを作り、東京都や国の入力用紙に直接プリントができるようにしてきました。昨年度まで使っていたのが次のソフトです。

 
体力テスト2020
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