教員の働き方改善・改革案15
問題意識から解決策へ
問いをもち、自ら解決しようとする児童を育てることが求められています。
教員も働き方についてまず問題意識をもち、声を上げるようになってきました。
しかし、単に早く帰れでは、何ら解決になりません。業務が多すぎるのです。
どうしたら業務を能率化させるか、減らせるかという具体的な解決策を自ら考えなければならないのです。
今回の特集は、「通知表の『行動の記録』の評価における改革(その1)」です。
通知表には、「行動の記録」の評価があります。様式は様々ですが、基は公文書である指導要録の様式2にある「行動の記録」です。
文部科学省:指導要録について 資料3-2 新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)【案】(10/11)2017年 P.86より引用
ここには、上のような10項目があり、通知表に反映されています。なぜなら、最終的に指導要録に記録しなければならないからです。一致していないと、学年末に新たに膨大な時間がかかってしまいます。これについては、昔から能率化が図られてきたと言えます。
1 何を評価するか。
上のような10項目だけを見ても、範囲が広すぎて、何を評価したらよいかが分かりません。
そこで、文部科学省では、次のような例示をしています。
文部科学省「行動の記録の評価項目及びその趣旨」2009年より引用
低・中・高別に趣旨が示されており、具体的な内容が分かります。しかし、実際に教員が評価するとなると、もっと具体的な評価基準が必要になります。
資料を探すと、愛媛県教育委員会が2020年に出した、「学習評価及び指導要録の 改善等に関する指導資料」(PDF)を見つけました。実に、素晴らしいと思いました。
p.33より一部引用します。
小学校によっては、通知表にこのような評価基準が載っています。だからこそ、教員は評価ができると思います。何を評価したらよいかが分からなくて時間ばかりかかるより、よほど教員の働き方改革になります。
ただ、通知表にあえて評価基準を載せない学校もあります。それについては、後ほど取り上げたいと思います。
2 絶対評価か個人内評価か
中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程分科会「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」平成31年によると、次のように示されています。(赤字は筆者)
【5】 「行動の記録」の評価
○ 「行動の記録」は,これまで,文部科学省の通知において,「各教科,道徳,特別活動,総合的な学習の時間,その他学校生活全体にわたって認められる児童生徒の行動について,各項目ごとにその趣旨に照らして十分満足できる状況にあると判断される場合には,○印を記入する」こととされており,また,各学校や設置者においては「特に必要があれば,項目を追加して記入する」こととされている。学校においては,「基本的な生活習慣」,「健康・体力の向上」,「自主・自律」等(※1)の項目に関し,児童生徒の行動の様子について評価を行っている。新しい学習指導要領の下においても,このような「行動の記録」の基本的な在り方は維持していくことが重要である。
この説明では、教科のように絶対評価で評価しても構わないとしても間違いではないでしょう。すなわち、十分満足できる状況ならば、どの項目であっても、何人の児童に対しても、○印を記入できることになります。
ところが、いろいろな小学校の通知表についての説明を見ると、そうなってはいません。
個人内評価を取り入れている学校がたくさんあります。
個人内評価とは、先の報告書に、次のように示されています。ただし、これは、行動の記録についての説明ではありません。総合所見及び指導上参考となる諸事項の説明です。
(個人内評価)
○ 児童生徒の学習意欲を高め,その後の学習や発達を促していくためには,児童生徒のよい点を褒めたり,更なる改善が望まれる点を指摘したりするなど,児童生徒の発達の段階等に応じ,励ましていくことが重要である。 このため,観点別学習状況の評価や評定を目標に準拠した評価として行う際には,そこでは十分示し切れない,児童生徒一人一人のよい点や可能性,進歩の状況等についても,積極的に児童生徒に伝えるとともに,個人内評価の結果として「総合所見及び指導上参考となる諸事項」に記入することが重要である。
個人内評価は、簡単に言えば、他人と比べるのではなく、自分の中で比べる評価です。例えば、「以前は平均50点しか取れなかったのが、平均80点を取れるようになった。他の児童から見れば劣るが、大変頑張っている。」ような状態のことを指します。
行動の記録に対して、絶対評価にするのか個人内評価にするのか、それぞれにメリットやデメリットがありそうです。(つづく)
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